健康に関する公的機関の見解

健康影響に関する評価

国際がん研究機関(IARC)

国際がん研究機関 リンク
IARC:International Agency for Research on Cancer

 世界保健機関(WHO)の付属機関。がんの原因究明や発がんメカニズムに関する研究を調整し、がんの抑制に対する科学的手法を開発している。また、モノグラフシリーズとして、様々な因子の発がん性評価を報告している。

人への発がん性リスク評価に関するIARCモノグラフ(2002年3月)

 国際がん研究機関(IARC)は、2001年6月、静的および超低周波電磁界の人への発がん性リスクについての評価結果を公表し、2002年3月にモノグラフ(専門書)を発刊しました。

モノグラフの結論
  • 超低周波磁界は、人にとって発がん性があるかもしれない(下表グループ2B)
  • 静電界、静磁界および超低周波電界については、人の発がん性に関して分類できない(下表グループ3)
国際がん研究機関(IARC)の発がん性分類
分類 分類基準 具体例
ヒトにおける
発がん性の証拠
実験動物に
おける
発がん性の
証拠
メカニズムの
証拠
グループ1:
ヒトに対して
発がん性がある
Carcinogenic to humans
十分 - カドミウム、アスベスト、ダイオキシン(2,3,7,8TCDD)、たばこ(能動、受動)、アルコール飲料、エックス線、ガンマ線、紫外線、ディーゼルエンジン排ガス、PCB、加工肉
【他を含む121例】
限定的
または、不十分
十分 強い(ばく露されたヒト)
グループ2A:
ヒトに対して
おそらく発がん性が
ある
Probably carcinogenic to humans
限定的 十分 強い、限定的
または、不十分
鉛化合物(無機)、クレオソート、アクリルアミド、日内リズムを乱すシフト労働、理容・美容労働、赤身肉
【他を含む89例】
不十分 十分 強い(ヒトの細胞または組織)
限定的 十分には至らない 強い
限定的
または、不十分
- 強い
グループ2B:
ヒトに対する
発がん性が
あるかもしれない
Possibly carcinogenic to humans
限定的 十分には至らない 限定的
または、不十分
クロロフォルム、鉛、コーヒー、漬物、ガソリン、ガソリンエンジン排ガス、超低周波磁界、無線周波電磁界
【他を含む315例】
不十分 十分 強い、限定的
または、不十分
不十分 十分には至らない 強い
限定的 十分 強い(ヒトには作用しない)
グループ3:
ヒトに対する
発がん性について
分類することが
できない
Not classifiable as to its carcinogenicity to Humans
不十分 十分 強い(ヒトには作用しない) カプロラクタム(ナイロンの原料)、カフェイン、原油、水銀(無機)、静磁界、静電界、超低周波電界
【他を含む500例】
上記以外の全ての状況
  • 十分(Sufficient evidence):
    ヒト/動物実験における発がん性の十分な証拠
  • 十分には至らない(less than sufficient evidence):
    ヒト/動物実験における発がん性があるとするには十分ではない証拠
  • 限定的(Limited evidence):
    ヒト/動物実験における発がん性の限定的な証拠
  • 不十分(Inadequate evidence):
    ヒト/動物実験における発がん性の不十分な証拠
  • 強い(Strong evidence):
    メカニズムにおける発がん性の強い証拠

国際がん研究機関(IARC)の発がん性評価は、その物質の発がんの可能性について分類したものであり、発がん性の強さを評価したものではありません。
なお、2019年1月にモノグラフの前文(Preamble)が改訂され、その際、「グループ4:ヒトに対して恐らく発がん性はない(probably not carcinogenic to humans)」は廃止されました。これにより、グループ4に唯一分類されていたカプロラクタム(ナイロンの原料)は、グループ3に統合されました。

IARCモノグラフに対するICNIRPの評価
  • ICNIRPは1998年に、実験的研究による証拠がない状況において、疫学データにより、ばく露ガイドラインを策定するのは不十分であると結論を下した。現状においても、ICNIRPの現ガイドラインを変更することは正当化できない。
IARCモノグラフに対するNRPBの評価

電磁界について