疫学研究

電磁界に関する研究事例

カロリンスカ研究所の研究

スウェーデンの高圧送電線付近に住む人々における磁界とがん

 カロリンスカ研究所(スウェーデン)のファイヒティング女史とアールボム博士により、高圧送電線から発生する磁界へのばく露が、がんと関連があるかどうかを調査するため、疫学研究(症例−対照研究)が実施されました。

 研究の対象となったのは、1960年から1985年までの期間に、スウェーデンの220kVおよび400kV送電線から300m以内にある住宅に住んでいた(成人の場合は、1年以上)ことのある436,503人(小児(15歳以下)123,419人、成人(16歳以上)294,379人、不明18,705人)で、その結果が、1992年に発表されました。

研究結果
  • 小児白血病に関して、磁界ばく露レベル(計算値)が0.2μT以上では、相対リスクが2.7と算定された。
  • 小児白血病に関して、磁界ばく露レベル(計算値)が0.3μT以上で見ると、相対リスクが3.8となった。
  • 小児白血病に関して、その関連性は一戸建てに住む子供のみに限定されているようだった。
  • 小児白血病と磁界の実測値との関連はなかった。
  • 脳腫瘍や子供の全がんについては関連性をほとんど支持しなかった。
ファイヒティング博士自身の見解

 この研究の最も明らかな弱点は、症例数が少ないことである。これは、研究された磁界のばく露レベルと病気の両方が極めて稀であることに起因する。このため、観測された関連は、偶然ということで説明できるかもしれない。

 強みは、スウェーデンの住民台帳システムを利用したことである。それにより、選択バイアス(選択の偏り)の可能性が最小限となった。

※ファイヒティング女史1995年の論文より

経済産業省の報告書(1993年12月)における評価

 他の研究成果と一貫性がないことや、症例数が少なく統計的な精度が低いことが指摘できる。

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